どこまでも広がる世界を見つめている。 風に揺れる髪がきらきらと輝きを増した。 「スノウ…あのさ」 「ん? 何だ」 当り前の事だが名前を呼ぶとこちらを見る。 その笑顔が眩しすぎて、ホープは僅かに視線を伏せながらゆっくりと口を開いた。 「前から気になってたんだけど…。 そのバンダナ、いつも着けたままだよね」 突然の質問に目を瞬かせたスノウだったが、すぐに白い歯を見せて笑う。 「ああ、これか」 黒いバンダナはスノウの特徴だ。 けれど、そのバンダナを脱いだところを見たことがない気がする。 ただ単にどうして常備しているのか気になっただけのことだったが、 何か大切なもの――セラからの贈り物だとか、仲間たちの大事なものだったりとか、 スノウの深い所に足を突っ込んでしまいそうで怖かった。 だからなかなか聞くことは出来なかったのだが、日に日に疑問は募るばかり。 そしてホープは意を決したようにスノウに質問を投げかけたのだった。 「実はな、サッズと同じなんだ」 「え?」 「この中にチョコボがいるんだぜ」 一瞬意味がわからなくて、今度はホープが口を開いたままスノウを見つめた。 そのままどうしたらいいかわからないホープに、内心後悔する年長の彼。 サッズがいるとはいえ、まさか自分の頭にもチョコボがいるだなんて、少しふざけすぎただろうか。 このくらいの年頃はちょうどからかってみたくなるんだと、わけのわからない弁解を自分に言い聞かせる。 すると、案の定――いや、かなりの予想外だった。 ホープは目をキラキラと輝かせ始めた。 「…ほ、本当に?」 「あ、ああ。本当さ」 純粋な瞳を輝かせる様子に否定する言葉が出てこない。 やはりサッズの例があるからだろうか。 ホープはスノウの冗談を簡単に信じてしまったようなのだが、 これはこれでまずいことになった。 「今もバンダナの中に?」 「あ、いや…今はちょっと遊びに行ってるみたいだぜ」 「放っておいて大丈夫なのかな」 「ま、まあ…心配しなくてもそのうち帰ってくるさ」 頭をぽりぽりと掻きながらスノウはちらりと様子を窺う。 いつものホープのあの鋭い突っ込みはどうした? 「何バカみたいなこと言ってるんですか」という返事を越えてしまった現実。 ここまであっさり信じてしまうなんて――やっぱり子供だ。 そんな純粋な子供に嘘なんて付くもんじゃない。 「今度サッズさんのチョコボとも会わせてあげよう」 嬉しそうにはにかむホープを見て、スノウは深い溜息を吐いた。 「ライトさん!」 息を切らせて走ってくるホープに、ライトニングは眉を顰めた。 「そんなに慌ててどうした」 真剣な声色で問いかけると、 ホープは目の前で立ち止まり、膝をつきながら呼吸を整える。 「スノウの頭にはサッズさんと同じようにチョコボがいるんですって」 「……まさか」 ライトニングは目を見開いた。 だが、目をきらきらと輝かすホープが嘘をついているように思えなかった。 「スノウにチョコボを見せてもらったのか?」 「いいえ、その時はどこかに遊びに行っていたみたいなので見れませんでした」 ふと、木の陰からこちらの様子をうかがう気配がしてライトニングはハッと気を向けた。 が、その正体がすぐにスノウだとわかって溜息をつく。 どんよりとした空気を纏っているからには、大分後悔しているようだ。 そんな背後の気配を気にすることなく、ホープは目を細めながら楽しそうに話を続ける。 「でも、すぐにでもサッズさんのチョコボに会わせてあげたいんです。 きっとチョコボも喜ぶと思うから」 こんなに嬉しそうな彼の表情を見るのも久々だった。 だからこそ、失望させたくはない。 ライトニングもくすりと小さな笑みを零した。 「…そうか。よかったな。これでまた賑やかになる」 「はい!」 ホープがいなくなったのを確認してから、 ライトニングは未だに木の陰に隠れるスノウにずかずかと近づいた。 「スノウ。お前、ホープをからかったな」 「ね、義姉さん!」 シャキン、と取り出されたライトニングの武器が閃く。 スノウの血の気がさっと引いていくのもお構いなしに、刃を目の前に突きつける。 「ふざけるのも大概にしろ」 慌てて首を振って抵抗を見せるスノウの首筋に冷たい切っ先が触れた。 「悪気があったわけじゃねぇんだ! ついつい、ホープが可愛くてな…」 「言い訳にならん!」 「うあああああっ!」 悲鳴が木霊する。 駆けつけた皆にライトニングは優しい微笑みを向け、何も心配ないと告げた。 その後――。 「その傷、どうしたんです?」 頬に殴られたような傷が出来ている事に気付き、 ホープは心配そうに問いかけた。 だが、スノウは苦笑を浮かべて大丈夫だと繰り返す。 「…俺が悪いんだ」 がっくりとへこむスノウは珍しい。 ホープはスノウに寄り添うように腰を下ろした。 「スノウ。元気出して」 「ああ…ありがとな」 結局あのあと、チョコボは行方知れずのまま。 無事に群れに帰ったのだとホープに言い聞かせたのだが、 純粋な心を弄ぶものではないと後悔するスノウであった。 ―――――――――――――――――――――― あのバンダナの中の髪はどうなっているのか気になったのでこのネタに。 割と冗談通じないホープかなって思ったんですが、 チョコボ関連だとすぐに信じちゃうホープも可愛いな。 それにしてもチョコボに乗るホープが可愛すぎてずっと見ていても飽きません。 TOPへ 戻る