僕はあんたの背中を見ていたんだ。 いつだってそうだ。 わけのわからない事に巻き込まれた時も。 母さんを導いて進んで行った時も。 真っ直ぐに進んでいくあんたの背中がとても大きくて、 追いかけても届かないとすぐに感じた。 だからだろうか。 僕はいつのまにか、その背中に惹かれていた。 幻にも近かった姿を追って、僕の中の思いが膨らんでいった。 正直、ずっと、あんたの事ばかり考えていたと言ってもいいかもしれない。 憎かった。 恨めしかった。 辛かった。 苦しかった。 全てが駄目になりそうな時、あの笑顔が浮かんできたんだ。 何で笑っていられるんだよ。 バカじゃないのか。 でも、そんなことお構いなしにあんたは僕の手をとって ぐいぐい前に進んで行く。 母さんもこんな感じだったのかな。 確かに、なんか妙に納得したのを覚えてる。 でも、それでも平気でへらへらしていられるのが悔しかった。 何にも考えてないんじゃないかって思った。 全てを奪ったくせに。 お前の所為で―――僕は。 激しい爆発音と衝撃のあと。 目が覚めると、温かい背中がそこにあった。 それは近づきたくて、でも近づけなかった背中だ。 沢山の思いが胸にあったはずなのに、 いざ自分の手に届いてしまうと何にもできなかった。 追いかけていたものがあまりにも簡単に、手に入ってしまったから。 だからかな。 胸に大きな穴が開いた気がして、 ライトさんからもらったナイフがとても重く感じたんだ。 「ホープ。すまない」 覗きこむ瞳の色が綺麗だった。 母さんが、言ってくれた。 僕の瞳は綺麗だって。 その言葉を口にした時、母さんもこんな気持ちだったのかな。 縋りつきたいと願った時。 大きな手で優しく頭を撫でてくれる感覚が、母さんに似ていた。 「お前の母さんを…この手で支えきれなかった。…すまん」 スノウの手に残る、母さんの温もり。 それを感じたら、今まで胸にいっぱい溜め込んでいた感情が一気に溢れ出した。 涙がじわじわと押し寄せてくる。 何でなのかわからない。 ただ、泣きたかった。 その涙をスノウは笑って拭ってくれる。 僕だって、スノウにあんなことをしたのに。 それなのに何も責めずに優しく支えてくれる。 僕はただ、もっとあんたに近づきたいと願ったんだ。 ―――――――――――――――――――― あのイベント辺りがやっぱり転機。 二人の溝が埋まり始めた瞬間は本当に嬉しかったです。 TOPへ 戻る