「今日はありがとうございました」 隣を歩く彼の手が触れそうになったその時。 ホープは一歩前に出て、ぺこりと頭を下げた。 本当は手を握ってみたかったけれど、 指を絡ませてしまったら放すのが惜しくなってしまう気がして不安だった。 そんな気持ちを誤魔化そうと頬を緩めると、彼も目を細めて穏やかな表情を見せる。 「俺も楽しかったよ。ありがとう」 休日を利用して二人で遊びに出かけた。 母さんの誕生日が近かったから、一緒にプレゼントを選んでもらったり、 ショッピングをしたり、楽しく過ごした時間はあっという間に過ぎた。 自宅はもうすぐそこだったけれど、正直まだ帰りたくなかった。 でも、自分の我儘で彼を引き止めるわけにもいかない。 ホープはふと視線を遠くに向けて空の色が変わるのを感じた後、ユージュの瞳を見つめた。 「いつも家まで送ってもらってすみません」 「ううん、全然気にしないで。 ホントはまだホープと一緒にいたくて仕方ないんだけど」 「えっ…」 「さすがにお泊りデートは出来ないから、我慢する」 「お泊り…デート…」 自分の心を見透かされたのかと思い、とくりと胸が跳ねる。 ユージュさえよければ家に泊まっていってくれればいいのに。 そう思ってもユージュにはユージュの事情があるから、 簡単に誘う事は出来ないけれど。 「もう少し、ホープが大きくなったらお泊りデートできるかな」 「こ、子供扱いしないでください」 と言いながらも、確かに自分はまだ子供だと自覚してしまう。 反論できずに口を尖らせているとユージュが柔らかく髪を撫でた。 「そんなホープも、俺は好きだよ」 「ユージュさん…」 頬を滑るユージュの手が夜風に触れて少しだけ冷えていた。 その冷たさで、自分の頬が熱くなっているのが余計にわかる。 「…今度はいつ逢えるかな?」 「休日ならいつでも…」 「スクールが終わってからじゃダメなの?」 「ダメじゃないですけど、時間が短くなっちゃいますよ」 「ちゃんと門限守るなんて偉いね。やっぱりホープは真面目だ」 「そんなことないです。…僕だって、ホントはまだ帰りたくなくて… ユージュさんと一緒にいたいって思ってるから…」 「ホープ…」 その声で、名前を呼ばれるだけで心臓の音が全身を駆け巡り、動けなくなる。 視線を上に向けると、一層深い色に染まった瞳がじっと見つめていた。 周囲が何も見えなくなってしまうような感覚。 「あ、の…」 「ホープ。キス…していい?」 戸惑った声に重なるように、艶を帯びたユージュの声が響く。 そんな風に問いかけられてしまったら、断るに断れない。 ホープは僅かに視線を伏せてこくりと静かに頷いた。 「じゃあ…するね」 頬を滑っていた手が顎に周り、軽く上を向かされる。 段々と近づいてくる顔に、ホープはただ瞼を閉じて待つしかなかった。 「…んっ」 微かに震えながらも、全てを包み込んでくれるような唇の感触。 啄ばむ様な優しい口付けが心地よくて、何も考えられなくなる。 キスをするのは初めてではないけれど、彼の熱が自分の中に入り込んでくる感覚はまだ慣れない。 上手く呼吸できなくて苦しげに眉を寄せると、息継ぎの隙間を作ってくれる。 「…ふ、ぁ…っ…ん、ん…」 触れては離れる唇が角度を変えながら何度も重なっていく度に、 頭の中がぼうっとして身体の力が抜けてゆく。 崩れ落ちないように思わずしがみつくと、ユージュの腕が背中を抱いて支えてくれた。 「…ユージュさ…んんっ…」 一旦唇が離れると、その次に別れの言葉が出て来てしまいそうで、 ユージュがすっと身を引いても自ら唇を寄せて求めてしまう。 まだ離れたくない。触れ合っていたい。 「ホープの唇、柔らかくて温かい…」 「ユージュさんのも熱くて…気持ちいいです…」 濡れた下唇をやわやわとユージュの唇がなぞる。 微かに潤んだ瞳は確実に熱に侵されていた。 せがむように見つめると、ユージュは困ったように笑いながらそっと囁いた。 「もう一回していい…?」 待ち望んでいたような言葉に、すぐに首を縦に振る。 ちゅっと軽い音を立てるだけのキスが降りてきて、意識を甘く溶かしてゆく。 熱っぽい吐息が交わって唇が離れると、ユージュが困ったように声を洩らした。 「…もう一回、だけ…」 「…はい」 返事をするとすぐに唇が重なる。 腕にしがみついていた手がやがて彼の背に回り、 頬を撫でていたユージュの手も後頭部へ移動する。 二人の影が夜の闇に溶けるまで、ひとときの甘い戯れは続いた。 ――――――――――――――――――― デートの帰り道の一場面。 ひたすらいちゃいちゃする二人にムフムフです。 もう少ししたらお泊りデートも実現するはず…。 ホント、ホープの家おっきいので泊まらせてあげたらいい。 さらに二人のいちゃいちゃをノラママが盗み見してて、息子の成長に感動していたらいいですね← TOPへ 戻る