act. 12.5 ――――――――――――――――――――――――― 「…ぁ、……」 首筋にかかる金色の髪の感触。 柔らかな唇がそっと肌に吸いつくと、ホープの全身がふるりと震えた。 くすぐったいのか、気持ちいいのかわからない。 現実なのか、夢を見ているのかわからない。 初めての感覚に、次第に恐怖が湧いてくる。 けれどスノウが触れてくれるたび、その恐怖が愛しさと相殺されていくような気がした。 「…っ…ん、…」 「寒くないか?」 「大丈夫…ッ…」 抑えきれない声が溢れるとスノウは慌てて顔を覗き込んでくる。 そんなに優しげに問いかけられたら声色だって狂ってしまう。 「顔、真っ赤だぞ」 「…っ…しょうがないじゃん…」 パジャマのボタンを一つずつ外されてゆく、その仕草がとてももどかしい。 露わになった素肌に空気が触れてひやりと冷えると彼の体温を求めてしまう。 首筋に吸いついていた唇はやがて鎖骨の辺りに下りてきた。 ちゅっと軽い音が聞こえると、薄紅色の華が白い肌に浮かび上がる。 幾つもの華が咲き乱れる中、ボタン全てが外され腹のあたりまで曝け出される。 白くしなやかな身体の上に二つの小さな主張があった。 太い指先がするりと伸びて、ホープの乳首に触れた。 こりこりと柔らかく押すと甘く濡れた声が漏れ始める。 潤んだ瞳に見つめられ、スノウはくすりと微笑んでからホープの耳元にそっとキスを落とした。 「…ぁっ…」 「お前…初めて…?」 「当り前…だよ……ぁあっ…」 意地悪そうに問いかけられて、唇を尖らせる。 微かな抵抗を見せたものの、意識はすぐに甘い愛撫に飲み込まれてしまう。 指先に摘まれた乳首の反対側を口に含まれ、 今までにないぬるりとした感覚に背中をしならせた。 「ふ、ぁっ……ぁ、ん…」 軽く吸われると得体の知れない感覚が背筋を伝って来る。 執着して何度も繰り返されると頭がぼんやりとしてきてしまう。 スノウの頭にそっと触れて突き放そうとするものの力が入らない。 熱い舌が乳首をぬるぬると這いずり回る、予測不能な愛撫に腰が揺れる。 「ッ…そこ、…ゃだ…っ」 抑えきれない素直な反応にスノウが口元を綻ばせる。 ツンと主張するそれをやわやわと甘噛みしながら言葉を洩らす。 「…んっ……気持ちいいのか?」 「…ゃ…っ…ぁッ…」 ふるふると首を振って快感に耐える。 ぎゅっと閉じた瞼にはうっすらと涙が浮かび上がっていた。 確実にホープは感じている。 そう自信を得たスノウは乳首を弄りながら、片方の手を下半身へ滑らせる。 太腿から徐々に中心へ。 パジャマの上からピンポイントの位置で指を止めて何度かなぞると、 しっかりと押し上げる熱の感触が伝わった。 「下もすげえことになってる」 「っ…触っちゃ…ッ」 「俺が触っても、ちゃんと勃つんだな…」 「…スノウのばか…っ」 そんな風に触られたら誰でもそうなってしまうだろう。 下着の上から触られるのがもどかしくて腰が揺れてしまう。 自ら擦りつける恥ずかしさより、溜まる一方の熱を解放したくて、 瞼を閉じながら無言の懇願を繰り返す。 そんな想いが通じたのか、やがてスノウの手がズボンを勢いよく引き下げた。 下着ごと脱がされ、何も身に纏わなくなった熱は露わになるなり天を向く。 直に手のひらが触れるだけで、電撃のような刺激が襲う。 ――自分でするより気持ちいいなんて。 握られて軽く扱かれるだけでとろとろと先端から溢れ出してしまう。 「スノ…ぁ…ぁっ、ん…」 「お前、しばらくしてなかっただろ」 「…スノウ…家にいたし…ぁっ…」 大きな身体を後退させ、スノウは股間に顔を埋めるように屈んだ。 熱の先端を指で突かれるだけでなく、裏筋を舌が舐め上げる。 今までにない直接的な刺激に思わず甲高い声が洩れてしまう。 「ん、ぁっ…ぁ…ッ!」 「溜め込むと身体に悪いだろ?」 「…ぁ…あぁっ」 「俺がいなくなっても…ホープは一人でちゃんと出来るよな」 「……ッん…、ぅ…」 笑みを浮かべ、根本を擦りながら先走りが溢れる先端に吸いついた。 ちゅるちゅると卑猥な音が耳に届くだけで煽られて、どうにかなってしまいそうになる。 しばらく溜め込んでいたせいもあり、限界はすぐにやってきた。 ぶるぶると腰が震えてその瞬間が近いことを訴えるものの、 スノウが口に咥えたままで、このままでは中に出してしまう事になる。 さすがにそれは居たたまれなくなってしまうと思い、ホープは頭をそっと掴んで引き剥がした。 「ぁ、あっ……出ちゃう…ん…」 「…いいって。一回出しとけよ」 けれど力がないホープの抵抗をいとも簡単に押しのけて スノウは先ほどより深くホープの陰茎を咥え込んだ。 唇全体で扱かれ、喉の奥に先端が擦れる。 ほんの数刻してから、ホープは白濁を口の中に放出した。 「ん、ぁああっ…あ――――…は…ぁ…」 刺激の波が襲いかかりホープの身体がしなった。 やがてぐったりと全身が倒れ込んで、荒く胸を上下させる。 一方のスノウは出されたものを飲み込んで、口の端に残った精液を拭う。 虚ろな瞳で見つめると目を細めて頭を撫でてくれた。 でも――。 「まだ、終わりじゃない…」 「…ホープ」 熱に浮かされた表情のまま手を伸ばし彼の頬に触れる。 「スノウがまだ…」 自分ひとりだけが限界を極めただけにすぎない。 スノウに何一つしてあげていない。 「けど、お前――」 自分の想いはただ一つ。 「スノウと、ひとつになりたい…」 それがどういうことかわかっているのかと、スノウは眉を顰めた。 半ば脅しかけるように指が下半身に伸び、今まで誰も触れたことないそこに辿りつく。 「ここ…使うんだぞ」 「っ…」 指で突いた入口は硬く窄まっている。 けれどスノウを受け入れないことだけはしたくなかった。 薄い闇の中で手を伸ばし、背中に腕を回す。 ホープは震える声で懸命に懇願した。 「ぁっ…わかってる。…でも、スノウの…挿れてほし…」 「っ…あんまり煽るなっつーの…」 頬を涙が伝う。 その言葉に観念したのか、入口あたりを弄っていた指がつぷりと入れられた。 スノウの太い指がゆっくりと中に押し込まれてゆく。 「…あ…ぁ…!」 先ほど放出されたホープの精液が潤滑剤となり、 ぬるぬるとあっという間に指を飲み込んでいった。 けれど、初めて受け入れる異物の感触に未だに慣れない。 何度か出し入れを繰り返されぬちゅぬちゅと音が聞こえてくる。 「ちゃんと、解さないとな」 「ひ、ぁ…あっ…ぁ」 「いいぞ。声出して…力抜け」 「…は、…はぁっ…ぁ、…ぅ」 一本だった指が二本、三本と増やされて縦横無尽に駆け巡られる。 中を引っ掻くようにして動かされ、時折腰が砕けるほどの良い所に直撃する。 抑えきれずに見悶えるとスノウがそこを重点的に攻めてきた。 「ん、ぁ…ぁ、っ…!」 怖くなって瞼を閉じて枕をギュッと握り締める。 すると掴んでいた手が解かれて温かい指が絡んだ。 不意に訪れた優しい感触にゆっくり瞼を開けると、頬に伝う涙を拭ってくれた。 「大丈夫…俺がここにいるから」 「スノ……んッ…」 孔に埋め込まれていた指がずるりと引き抜かれ、その代わりにスノウの熱が入口に宛がわれる。 先端が触れるだけで心臓が破裂しそうなくらいドキドキしていたけれど、 彼の真っ直ぐな瞳が全てを包み込んでくれる気がした。 息を吐くとスノウの全身が覆いかぶさる。 「入れるぞ」 頬を撫でながらそう囁かれ、こくりと頷くと小さな蕾の中へと挿入される。 抉じ開けられる痛みにホープの足がぴんと撓った。 「…は、ぁっ…あぁ、っ…!」 「…きつ…っ…」 指とは比べ物にならないほどの質量に思わず歯を食いしばる。 こんなにきつくて、大きくて熱いものだと初めて知った。 溢れて止まらない涙を抑えようと必死に腕を伸ばしてしがみつく。 「あ、…スノ…あ、…ぁ、ああっ…」 「ホープ…」 「…ぁ…入って…」 痛くて辛いのに、奥深くまで飲み込んでいく身体は止まらない。 少しずつスノウのものが自分の中に入り込んでいく感覚が、たまらなく幸せだった。 隙間なくひとつになれることが嬉しかった。 心の奥がじんと満たされていくような気がして、生温い涙が頬を伝う。 熱い身体の額に汗が浮かぶ。 虚ろな瞳で見上げると、僅かに眉を顰めたスノウがふっと口元を緩めた。 「ゆっくりするからな…」 「ン…」 何も怖くない。 そうなだめるような優しい唇が首筋を辿る。 キスが出来ないもどかしさを紛らわせるようにホープも彼の肩にそっと唇を寄せた。 やがてスノウがどっと息を吐いて動きを止めると、瞼をゆっくり開いて問いかける。 「…終わった…?」 「ああ、全部入った」 どくどくと下半身に感じる熱。 恥ずかしさも恐怖も全部吹き飛んでしまうほどの幸福が包み込み、 自然と口元が緩んでしまう。 「嬉しい…」 「俺もだ」 スノウもつられて目を細めると、枕の上に横たわった手をそっと握った。 汗で湿った指が絡み合い深く結ばれる。 この手を離さないでいられたらどれだけ幸せなのだろう。 ――二人は、叶うことのない同じ願いを胸に抱いていた。 互いの愛おしい姿を焼き付けるように見つめ合った後、スノウの身体がゆっくりと動き出す。 「…ぁ…あぁ…ッ…」 苦しさに眉を顰めると手のひらがぎゅっと握られる。 肌に汗がぱたぱたと飛び散る。 その匂いがひどく興奮した。 目に汗が染みて痛かったけれど、 涙が浮かぶ視線の向こうに見える彼の表情がひどく愛おしかった。 「スノ…好き…っ」 襲いかかる快感と未知の恐怖を紛らわせるために、うわごとのように何度もつぶやく。 どれくらいこの想いを伝えられているだろう。 どれくらいこの想いを感じてくれているだろう。 「…ぁ…っ…」 もう一度最奥まで押し込まれて呼吸を整える。 唇が触れ合いそうな距離。 吐息が交わる近さでスノウはそっと笑みを浮かべた。 「俺も…好きだ…」 そう囁かれた途端、昂ったホープの熱が握られ上下に擦られる。 同時に腰の抽出が再開されただひたすらに喘いでいた。 「…ゃ、ああっ…」 「ホープ…ッ…」 「…も、ッ…だめぇ、…あ、あっ」 びくびくと震える腰の制御が効かない。 もうこの身体を誰にも止める事が出来ない。 「…イけよ…ホープ」 「は、…ぁあ、…っああ、あ―――」 目眩がするほどの真白な景色が襲いかかる。 腹のあたりに放出されたスノウとホープの白濁がとろとろと混じり合う。 苦しくてとてつもない疲労感が襲いかかっていたけれど、 それでもひどく満たされていて、繋いだ手を離さないように指先だけはしっかりと力を込めていた。 next... 戻る